突然上から声をかけられて、私ははっと顔を上げた。

 誰?

 声をかけてきたのは、背の高い男の子。

 色素の薄い髪に、整った顔立ちで、かなりのイケメンだ。

 君「も」っていうことは、高校生?

「君、けっこうかわいいね。俺と連絡先交換しない?」

 ……え、ナンパ?

 初対面で、しかも修学旅行中に?

 あの人の班の人は? と思って周りを見回すと、またか、とあきれたようにしゃべる……って、全員女の子だし!?

 うわぁ、こんな人って現実にいるんだ。

 なんて、自分の置かれた状況を忘れて呆ける。

「ね、ほら、スマホ出してよ」

「あ、あのっ! 私、スマホの充電ないんですけど……」

「こんなこと言わずにさ、連絡先くらいいいじゃん?」

 ああ、なんでこんなことになっているんだろう。

 本当なら、楽しくお土産を見て回っているはずの時間なのに。

 怖いよ、心細いよ。

 朝比くん……!