「変な奴だな。
あいつを殴ったって言ったら、すげー怒るかと思ってた」
「怒んないよ。なんか……すごいスッキリした」
「やっぱり変な奴」
そう言った太郎さんに、心の中で「ありがとう」って言った。
太郎さんは変なものを見るように私を見てるけど、
私は太郎さんの気持ちが嬉しかったんだよ。
私には、翼君を自由にしてあげる勇気がなかった。
そんな私の代わりに
太郎さんが翼君を突き放してくれて
殴ってくれて……。
きっと翼君は、殴られなかったら彼女の所に行けなかったと思う。
私を傷つけたくないっていう優しさのナイフを離せなかったと思う。
太郎さんの一発が、翼君に
ナイフを捨てる衝撃を与え
一歩を踏み出す勇気を与え
私の心に暖かい光をくれたんだ。

