週が明けた月曜日。
靴を履き替え廊下を歩いていると、体育館から戻って来たらしい鳴海くんとバッタリ会ってしまった。お互い目を見開いて立ち止まる。
……ま、まさか朝イチで会っちゃうとは。友達計画とやらに協力してもらう事になったものの、心の準備はまだ出来てないのに。っていうか、こういう時って何か話しかけた方がいいの? せめて挨拶はするべきだよね? 頭の中でぐるぐる考えるけど、考えれば考えるほど私の口からは中々声が出てこない。まるで喉に何かが詰まっているみたいだった。
「……はよ」
「っ!」
鳴海くんの小さな声が聞こえた。様子を伺うように、鳴海くんはじっと私を見つめている。空気を求める金魚のように口をパクパクと動かしていた私は、声を出すのを諦めぺこりと軽く頭を下げた。それから逃げるように走り去る。……自分でもちょっと感じ悪いかなぁとは思ったけど、画面と違ってやっぱり実物は怖いのだ。特に、あのつり目がちな三白眼にはまだ慣れそうもない。でも、せっかく話かけてくれたのに今の態度はないよなぁ……。逃げてきちゃったし、せめて挨拶を返せたら良かったんだけど……。
少しの罪悪感に胸を痛めていると、ポンと肩を叩かれた。
「おっはよう一花!! どう? 鳴海と上手くやってるー?」
朝から元気いっぱいの皐月ちゃんに、私はどんよりしながら振り向いた。
「皐月ちゃん……」
「わ、どしたの!?」
慌て出した皐月ちゃんに「実は……」と今あった出来事を全て話した。すると、皐月ちゃんは納得したように頷く。
「ああ、一花が男子苦手なのはみんな知ってるんだから気にしなくて大丈夫だよ」
「……怒ったりしてないかなぁ」
「そんな事で怒んないって! それに、声は出してなくても頭は下げたんでしょ? 無視したわけじゃないんだから大丈夫だって」
「で、でも」
「う~ん、そうだなぁ。どうしても気になるなら次会った時に挽回したらいいんじゃない?」
次? ……そうか。次に会った時に挨拶出来るようにすればいいのか。いや、それが難しいんだけどね。出来るなら今やってるっていうね。
「……もう少し慣れるまで無理かも」
私の呟きに苦笑いを浮かべていた皐月ちゃんが、何か閃いたようにパッと笑顔になった。……ヤバイ。この笑顔は何かとんでもないことを思い付いた時の笑顔だ。私は身構える。
「そうだ! 今度うちの部活見に来なよ! 鳴海に慣れるためにさ!」
「ええっ!?」
案の定、とんでもない言葉が皐月ちゃんの口から飛び出した。だって部活ってバスケ部だよ!? 男子バスケ部! 女子は皐月ちゃんと後輩のマネージャーの二人しかいないじゃん!! そんな魔窟みたいなところにレベル1の勇者が行くなんて無理なんだって!!
「体育館のギャラリーからこっそり見ればバレないバレない! もしバレても男子は近付けないようにするから安心して!」
「で、でも! 部員の皆さんは見学なんて迷惑だと思うよ!?」
「いやいやむしろウェルカムだから! てかバスケ部見学しに来る女子って実は結構多いのよ。だから一花が来ても全然問題なし! それに、可愛い女の子に見に来てもらうと部員のやる気は上がるし、こっちとしても助かるの!」
いや、それは私じゃ力不足だろう。やる気が上がるどころか無駄に気を使わせてしまうに決まってる。そんな事を考えていると、皐月ちゃんがどんどん話を進めていく。
「あとで色々確認してみるね! あ、でも鳴海には来ること内緒にしといて。サプライズにしたいから!」
結局皐月ちゃんの圧に負けて頷いてしまったけど、パワハラ強要ダメ、絶対、だよ。
靴を履き替え廊下を歩いていると、体育館から戻って来たらしい鳴海くんとバッタリ会ってしまった。お互い目を見開いて立ち止まる。
……ま、まさか朝イチで会っちゃうとは。友達計画とやらに協力してもらう事になったものの、心の準備はまだ出来てないのに。っていうか、こういう時って何か話しかけた方がいいの? せめて挨拶はするべきだよね? 頭の中でぐるぐる考えるけど、考えれば考えるほど私の口からは中々声が出てこない。まるで喉に何かが詰まっているみたいだった。
「……はよ」
「っ!」
鳴海くんの小さな声が聞こえた。様子を伺うように、鳴海くんはじっと私を見つめている。空気を求める金魚のように口をパクパクと動かしていた私は、声を出すのを諦めぺこりと軽く頭を下げた。それから逃げるように走り去る。……自分でもちょっと感じ悪いかなぁとは思ったけど、画面と違ってやっぱり実物は怖いのだ。特に、あのつり目がちな三白眼にはまだ慣れそうもない。でも、せっかく話かけてくれたのに今の態度はないよなぁ……。逃げてきちゃったし、せめて挨拶を返せたら良かったんだけど……。
少しの罪悪感に胸を痛めていると、ポンと肩を叩かれた。
「おっはよう一花!! どう? 鳴海と上手くやってるー?」
朝から元気いっぱいの皐月ちゃんに、私はどんよりしながら振り向いた。
「皐月ちゃん……」
「わ、どしたの!?」
慌て出した皐月ちゃんに「実は……」と今あった出来事を全て話した。すると、皐月ちゃんは納得したように頷く。
「ああ、一花が男子苦手なのはみんな知ってるんだから気にしなくて大丈夫だよ」
「……怒ったりしてないかなぁ」
「そんな事で怒んないって! それに、声は出してなくても頭は下げたんでしょ? 無視したわけじゃないんだから大丈夫だって」
「で、でも」
「う~ん、そうだなぁ。どうしても気になるなら次会った時に挽回したらいいんじゃない?」
次? ……そうか。次に会った時に挨拶出来るようにすればいいのか。いや、それが難しいんだけどね。出来るなら今やってるっていうね。
「……もう少し慣れるまで無理かも」
私の呟きに苦笑いを浮かべていた皐月ちゃんが、何か閃いたようにパッと笑顔になった。……ヤバイ。この笑顔は何かとんでもないことを思い付いた時の笑顔だ。私は身構える。
「そうだ! 今度うちの部活見に来なよ! 鳴海に慣れるためにさ!」
「ええっ!?」
案の定、とんでもない言葉が皐月ちゃんの口から飛び出した。だって部活ってバスケ部だよ!? 男子バスケ部! 女子は皐月ちゃんと後輩のマネージャーの二人しかいないじゃん!! そんな魔窟みたいなところにレベル1の勇者が行くなんて無理なんだって!!
「体育館のギャラリーからこっそり見ればバレないバレない! もしバレても男子は近付けないようにするから安心して!」
「で、でも! 部員の皆さんは見学なんて迷惑だと思うよ!?」
「いやいやむしろウェルカムだから! てかバスケ部見学しに来る女子って実は結構多いのよ。だから一花が来ても全然問題なし! それに、可愛い女の子に見に来てもらうと部員のやる気は上がるし、こっちとしても助かるの!」
いや、それは私じゃ力不足だろう。やる気が上がるどころか無駄に気を使わせてしまうに決まってる。そんな事を考えていると、皐月ちゃんがどんどん話を進めていく。
「あとで色々確認してみるね! あ、でも鳴海には来ること内緒にしといて。サプライズにしたいから!」
結局皐月ちゃんの圧に負けて頷いてしまったけど、パワハラ強要ダメ、絶対、だよ。

