秘密の彼氏は、私にだけ甘すぎる



それから数日が経ったある日。


この日、日直だった私はいつもよりも朝早く登校してきた。


グラウンドの前を通ると、誰かが一人でサッカーをしていた。

その誰かとは、長嶺くんで。


ウチの高校のサッカー部は朝練がないと、果耶から聞いていたけど。

もしかして長嶺くん、いつも朝早く登校して一人で練習してるの?


長嶺くんは今、リフティングをしていて。サッカーボールを自由自在に操る彼に、思わず見入ってしまう。


私がグラウンドの前でしばらく見ていると。

ボールがコロコロと、私の足元へ転がってきた。


私がボールを手に取るのとほぼ同時に、長嶺くんがこちらへと走ってきた。


「ごめん、ボール……」


やばい。私のすぐそばに長嶺くんが。


憧れの彼を前にし、鼓動が一気に速くなるのが分かる。


「どっ、どうぞ」

「……ありがと」

「あっ、あの……!」


走っていこうとする長嶺くんに、私は思わず声をかけてしまった。