「長嶺くーん!」
「翔也くん、お疲れ様」
部活が終わると、長嶺くんはあっという間にファンの女の子たちに囲まれてしまう。
わあ、すごい人気。少女漫画に出てくるヒーローみたいにあんなにモテてる人、初めて見たかも。
でも、あれだけかっこよくてサッカーも上手なんだから。そりゃあ、モテて当たり前か。
「翔也くん。これ、受け取ってくださいっ」
「あの、私も!」
「……あー、悪いけど。それ、いらないから」
ファンの子たちに冷たく無表情で言うと、長嶺くんはスタスタと歩いていってしまう。
……え。なんか長嶺くん今、すごく冷たい目をしていなかった?
さっきサッカーをしていたときの太陽みたいなキラキラした笑顔は、一体どこへ?
「きゃあ、長嶺くんかっこいいー!」
呆然と私が長嶺くんの後ろ姿を見つめていると、突然隣から果耶の叫び声が聞こえて肩がビクッと跳ねる。
「サッカーしてるときと違ってあの冷たい感じ、最っ高だわ。それに聞いてたとおり、長嶺くんってほんとに誰からの差し入れも受け取らないなんて。やばいんだけど」
私の隣で、果耶が興奮気味に言う。
「え、そうなの?」
誰からの差し入れも受け取らないなんて、どうしてなんだろう。
「なんかね、噂によると長嶺くんには好きな子がいるみたいで。その子からの差し入れしか貰わないって決めてるんだって」
「へぇ」
「長嶺くんに想われてる子って、誰なんだろうね?」
長嶺くん、好きな子いるんだ。
今日彼のことを知ったばかりなのに、なぜかその事実に胸が痛んだ。



