翌朝。

「おはよう、理帆……って、どうしたの!? 目、なんか腫れてない!?」


登校してきた私を見て、果耶が目を丸くする。


「ああ。昨日ちょっと余命ものの映画観て、号泣しちゃって」

「そうなの? それなら良いけど。何かあったのかと思って心配しちゃった」

「ごめんね、ありがとう」


果耶に、嘘をついてしまった。


「そうだ理帆。昨日の月9、観た?」


果耶と話していると、しばらくして翔也が教室に入ってきた。


「長嶺くーん」

「翔也くん、おはよ〜!」

「……はよ」


教室に入るなり、さっそく数人の女の子に囲まれる翔也。


相変わらず無表情だし、少し前に彼女の存在を明かした翔也だけど、彼の人気は全く衰えることなく今日も健在だ。


他の女の子と一緒にいる翔也を見ていると、胸の辺りがモヤモヤするなんて。

昨日あんなことがあったというのに、自分は彼のことが変わらず好きなのだと痛感させられる。


「あっ! おはよう、長嶺くん」

「ああ、おはよ……っ!」


果耶に声をかけられた翔也が挨拶を返し、次に私を見た瞬間大きく目を見開く。


「白井さん、その目って……俺のせい、だよね」

「……」


翔也の顔を見ることなく、私は席を立つ。


「ごめん、果耶。私ちょっとお手洗いに」


それだけ言うと、早足で私は教室を出る。