秘密の彼氏は、私にだけ甘すぎる



果耶と一緒にグラウンドへ向かうと、そこは沢山の女子で溢れていた。


「長嶺くん、頑張ってー」

「長嶺くんかっこいいー」


そんな黄色い声が、至るところから聞こえてくる。

どうやら彼女たちのお目当ては、長嶺くんという人らしい。


「ねぇ、理帆。あの人だよ。長嶺くん!」


果耶が指さす先にいるのは、サラサラの黒髪を揺らしながら走る、目鼻立ちの整ったイケメン。


彼を一目見た瞬間「かっこいい」と、私は呟いてしまった。


作り物みたいに整った顔の彼は、まるで少女漫画に出てくるヒーローみたい。


しばらく果耶の隣で見ていると、あのイケメンくんが他の部員からパスを受ける。

彼はドリブルでボールを運び、あっという間に1人、2人と抜いていく。


……す、すごい。

サッカーのことは詳しくないけれど。彼が他の人よりも格段に上手いということだけは分かる。


そして最後のディフェンスをかわすと、彼が長い右足でボールを蹴り、見事ゴールネットを揺らした。


「きゃああああ」


彼がシュートを決めた瞬間、グラウンドがまた一段と騒がしくなる。


すごい。かっこいい……!


チームメイトと笑顔でハイタッチする長嶺くんの笑顔は、太陽みたいに眩しくて。


果耶に連れられてここに来るまで私は、イケメンと噂の彼には全く興味がなかったけれど。

このとき私は、一瞬で長嶺くんに心を奪われてしまった。