秘密の彼氏は、私にだけ甘すぎる



私が長嶺くんのことを知ったのは、高校に入学して1ヶ月が経った頃だった。


「サッカー部に、かっこいい人がいる!」と、同じ1年の女子の間で噂になっていたんだ。


「ねぇねぇ、理帆。あたしたちもグラウンドにサッカー見に行かない?」

「え!?」


ゴールデンウィーク明けのある日の放課後。


帰宅部の私が、荷物をまとめて帰ろうとしていたとき。

席が前後ということで仲良くなった、友達の伊藤(いとう) 果耶(かや)が、声をかけてきた。

果耶は、明るめのふんわりボブが似合う可愛い女の子。


「サッカー部にすっごいイケメンがいるんだって! ねぇ、見に行こうよ〜」

「ええ!? 果耶、一人で行ってきなよ。私は今日、このあと家の手伝いがあるの」

「お願い! ちょっとだけだから。ね?」


果耶が胸の前で手を合わせ、首を傾げて可愛くおねだりしてくる。


「もう、しょうがないなぁ。ほんとに、ちょっとだけだよ?」

「ありがとう、理帆〜っ!」


こうしてこの日私は、果耶の付き合いで初めてサッカー部の練習を見にいくことになった。