萌が今一番やりたいことと言えば、やっぱり絵を完成させることだった。


この大きな一枚絵が完成すれば、きっとすごく達成感があるはずだ。


早く美術部のみんなにも見せてあげたい。


萌は筆を取り、キャンバスの前に立った。


丁寧に丁寧にキャンバスの中央の絵を完成へ近づけていく。


部屋の中には絵の具の匂いが漂い、そこは萌の大好きな美術室のようだった。


絵を描いている時間は熱中してしまい、気がつけば何時間でもキャンバスに向かっていることがある。


この集中力がどこから来るのか、自分でも不思議に感じることも多かった。


「萌、そろそろご飯よ」


母親の声が聞こえてきて萌はようやく手を止めた。