「わぁ、ケーキあるんだ」
それに気づいた花音が、猫を床におろして俺の隣に移る。
興味津々、といった様子でメニューをのぞき込むけど…。
ちょっと待って。
…距離、近すぎる。
呼吸止まりそう。
ていうか、心臓はもう止まってる。
いい匂いするし。
…間違いなく、花音の一番近くまで寄った男だろ、俺が。
「尊くんもなにか食べる?」
「え? …あー、俺はいいかな」
「わたしは食べていい…?」
何故か不安そうに聞いてくる花音に笑いながら、「いいよ」と返す。
あと、上目遣いやめてね。
「んー、どうしようかなぁ」
はー。
静まれ、俺の心臓。
持ちこたえろ。まだデートははじまったばかりだぞ。



