【完】溺愛禁止令






「花音、おはよ」




席につくと、唯一の友人が話しかけてきた。



サラサラな黒髪ボブを揺らしてわたしに近づいてくるのは、若狭(わかさ)こころちゃん。


……あ。
ちがった。


黒髪じゃないや。
アッシュグレー、っていうんだっけ?



何度もこの髪色を黒髪って言っちゃって、よく怒られてたんだよね。





「こころちゃんおはよう」


「なんか元気なくない?」





こころちゃんはわたしの小さな変化にもすぐ気づいてくれる。



ミリ単位で前髪を切ったとか、そういうときも。



マイペースで自由奔放だけど、洞察力はあるし、そのお人形さんみたいに可愛らしい見た目と愛嬌のおかげでめちゃくちゃモテる。



わたしなんかと一緒にいるべきではない女の子。……とか言ったら、また怒られちゃうけど。