音は聞こえないけど…。
確かに、尊くんの手が力強くバトンを握る。
絃くんは疲れた様子でトラックの中で座り込む。
その間も、尊くんがすごい勢いで一位の男子を抜いて…。
…は、はやい。
目で追えないほど、速いスピードでトラックを走り抜ける。
瞬きする暇もないほどの時間で、尊くんがゴールテープを切った。
…もちろん、一位で。
『2年3組、芙遥尊くんが一位でゴールテープを切りましたーーっ』
そんなアナウンスが流れている間も、わたしはドキドキして胸を抑えるのに必死だった。
「すごーいっ、花音、見てた!?」
興奮したこころちゃんに聞かれて、わたしは小さく何度も頷くので精いっぱい。
…どうしよう。
真剣に走る尊くん、かっこよかった…。



