「いって〜……」
は…と息を飲む。
そうだ、今わたし、誰かとぶつかって…。
声だけでも分かったけど、少しだけ顔を上げると、少しだけ見覚えのある男子生徒が伸びをしていた。
「…あ、ごめんっ、痛かった?」
少ししてからわたしに気づいて、謝罪。
…わたしがぼーっとしてたのがいけなかったのに。優しい人なんだな。
「だ、大丈夫……です」
「ほんと? よかったぁ」
ほっとしたように笑った。
だけど、こういう人との会話がいちばん苦手だから、今すぐ逃げたくなってしまう。
「それじゃあ…」
顔も合わせず、わたしは教室の中に入った。
おかしいな。
今のひと、去年も同じクラスだったはずなんだけど。まるで初対面みたい。
…はぁ、って小さくため息。



