家族は切れ切れってうるさいけど、これがいちばん落ち着くの。


目が見えてると、ちょっと違和感。



そして使い古した丸メガネ。
薄ピンクの細いフレームがおきにいり。



春だけは、この色を“桜色”って呼びたくなる。




一年間ですっかり通い慣れた校舎に足を踏み入れる。
上履きに履き替えて、階段をのぼる。




2年生のフロアに到着して、ぼーっと下を向きながら歩いてたら。




──どんっ




「ひゃ…」と思わず小さく声を上げてよろける。



その拍子にメガネが外れて地面にころがった。
視力を失ってありえないくらいぼやけてるけど、手探りでメガネを拾う。