大人しく口を閉ざした。
尊くんはわたしから体を離して、「はぁ」と息をつく。
「…やっとだ」
「やっと…?」
「やっと手に入れた」
《 俺のシンデレラ 》
呟かれた尊くんの口元に、視線を奪われた。
…これって、もしかしなくても。
「わたしたち…両想い?」
「そうだよ。…それどころか、恋人」
「っ……」
自覚した瞬間、涙があふれてきた。
それを見て、たった今わたしの”彼氏”になったばかりの人は、優しく笑いながら涙を拭って。
「…泣くなよ。かわいいなぁ」
「う……っ」
「大好きだよ、花音」
そういって、もう一度、今度は短いキスを落とされた。
…どうしよう。
今、幸せだ。
去年までは、こんなことになるなんて思いもしなかった。
一生恋愛なんてしないんだろうって思ってた。
それを覆してくれた尊くんのこと、ちゃんと隅々まで愛すから。
「…覚悟しててよ、みことくん」
ふっと笑う、彼の顔に見とれていたら。
「……覚悟するのは花音のほうじゃないの?」
優しく、お姫様抱っこでベッドまで運ばれた。
わたしは今日も、尊くんに視線を奪われる。
──これは、ただのエキストラが
ひょんなことからヒロインに抜擢された
奇跡だったり必然だったり運命だったりする恋のお話。
【 溺愛禁止令 】
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