「小波さんだって、俺の名前知ってるでしょ」
「そりゃ、もちろん…!」
「呼んでみてよ」
まっすぐのその視線が痛くて、逃げ出したくなった。
だけど…。
なんでだろう。
こんな太陽を目の前にして、こんなことに屈するような情けない人間だと思われたくなかった。
「……芙遥(ふよう)、くん」
「うん。下の名前は?」
「尊…くん」
言われるがまま、彼のフルネームを答えた。
そう…彼、芙遥尊くんは。
学年一の王子様で、持ち前の明るさで男女問わず人気者。
あまりに有名だから、去年はクラスが違ったけど存在だけは当たり前に知っていた。



