「落ち着いた?」
「…うん」
体を離したあとに見た尊くんの顔は、優しく微笑んでいて。
また泣きそうになったけど、泣いて酷くなった顔を見られたくなくて、顔を逸らす。
「…尊くん、どうしてここに」
「教室もどっても花音が戻ってなかったから、嫌な予感して来た道を引き返したら風音たちに会ったんだよ。そしたら体育倉庫の鍵なんか持ってたから、脅して奪ってきた」
「……脅したの?」
「うん。でも花音に嫌われたくないから内容は秘密」
そんなことで嫌わないのに。
ふふ、と笑っていると、突然体が宙に浮いた。
「え……っ!?」
「あ、こら。暴れるな」
「ひ、ひとりで歩けるよ…っ」
これから向かう先なんて、教室か保健室の二択なのはわかるけど。
流石にお姫様抱っこのまま廊下を歩くのは恥ずかしすぎて死ぬ…!!
「抵抗したらキスするよ」
「っ……」
そして大人しくなってしまうわたしも。
この前された甘いキスの味を思い出して、顔が熱くなってしまう。
…別に、そんな脅しみたいに使うんじゃなくて。
いつでも、好きな時にしてくれたらいいのになぁ…と思うのは、卑怯でしょうか。



