「ねえ、ちょっといい?」
「……は」
返事をしようとして、固まった。
振り返ると、その相手はひとりだけじゃない。
…何度も見た顔。
千代森さんだ。
それと…その両端には、女子生徒がふたりいる。
合計三人。今この場には、わたし含め四人しかいない。
…っていうことは、この人たちが呼び止めてるのってわたしだよなぁ。
なんか逆鱗に触れるようなことしたっけ…。
と考えてみても。
…心当たりしかない。
尊くんのこと…だよね、おそらく。
逃げるという選択肢は端から捨てて、わたしは小さく「…はい」と返事をした。
そもそも、そうだ。
千代森さんはわたしなんかとは違い華やかだし、可愛らしいし、モテるという話も聞いたことがある。