「ご、ごめ……っ」
「そんなに嫌だった? ごめん、軽率だった」
申し訳なさそうに謝る尊くんの姿に、胸が張り裂けそうになった。
ちがう。…違うの。
複雑な気持ち。
これが恋心の本質、なのかな。
キスできて嬉しいのに、なんで尊くんがキスしてくるのかわからない。
…好きすぎて、苦しい。
なにもかもはじめてすぎて、涙止まんないよ。
「…う、うれしいの……」
「え?」
「嫌なんかじゃないよ…」
伝われ。
…わたしの気持ち、伝わってしまえ。
そんなずるいことを考えては、涙を止めることに必死だった。
「……なんだよそれ。期待してもいいの?」
切なく揺れるひとみがわたしを見つめる。
期待してよ。
たくさん、わたしを求めてほしいよ。
…おかしいね。
尊くんのことを好きになって、わたし変わっちゃったみたい。
──雨音の中降り注いだキスは
甘い飴玉のような味がした。