イスに座りなおして、もう一度本を開く。
どこまで読んでたっけ。
…そうして読書をはじめて、どれだけの時間が経ったかわからない。
本の貸し借りにくる生徒もいなかったし、ずいぶんと集中して文字を追っていたと思う。
もうすぐ、犯人を言い当てて終結に向かっていく、いちばんの山場を読んでいたとき。
「──さん」
耳せんをしてるみたいに、遠くのほうで声が聞こえた。
少し違和感に感じる程度。
わたしの脳は本の世界に浸っていた。
「──小波さん」
「へ…?」
間抜けな声を出して、現実世界へ引き戻される。
び、びっくりした…。



