「花音、大丈夫?」




バスで隣の席に座るこころちゃんが、窓際に座るわたしに声をかけてくれた。




「うーん……酔ったかも」





それだけじゃないけどね。
だけど、こころちゃんはこの修学旅行をひどく楽しみにしてたから、余計な心配をかけさせるわけにはいかない。





「酔い止めは?」


「飲んだんだけどなぁ」


「そっかぁ…お菓子とか食べれる?」





不安そうにお菓子を差し出してくるこころちゃんに笑いかけて、それを受け取った。
口直しにはちょうどいい。




そんなこころちゃんがこの行事を楽しみにしていた大きな理由っていうのが、まさしく絃くんだ。




こころちゃんと絃くんのふたりは、どうやら文化祭のキャンプファイヤーのときに晴れて恋人同士になったらしい。