尊くんは誰にでも優しい。
女の子が重いものをもってたら助けてあげるのって、尊くんにとったら当たり前なんだ。
実際、わたしは今日までそういう場面を何度も見て来た。
そのたびに女の子が顔を赤く染めていて…。
あぁ、やっぱり尊くんってモテるんだなぁ…って思う。
恋する女の子はかわいい。
キラキラして見えるし、人生が楽しそうだ。
…だけど、わたしには。
恋とかそういうの、似合わない。
だからわたしはいいの。
尊くんの恋だって、ちゃんと純粋な気持ちで応援できるからね。
「花音」
もうすっかり聞きなれた柔らかい声で名前を呼ばれる。
放課後の教室、だんだんと人がいなくなっていく空間。
わたしはその影を見上げた。