「…それより、尊くん、さっきの……」
「うん?」
「刑法なんだかってやつ…」
「あぁ」
忘れたくても、頭から離れないもんなんだよな。
無駄に記憶力だけはいいらしいから、俺。
「父さんが弁護士やってんの」
「…え! すごい」
「はは、すごいかはわかんないけど。…それで昔から、日常生活で使えそうな法律を口うるさく教え込まれてたから、自然とな」
成り行きだけどね。
でもまさか、役に立つ日がくるなんて思わなかったな。
「すごい……かっこよかった、尊くん」
「っ……」
あー、もう。
…なんでそういうこと言えちゃうのかな、この天然ちゃんは。
くそ、ドキドキする…。
俺のことは好きにならないのに、そうやって俺のことはもっと惚れさせる。
…”ずるい”の極限だね、花音ってやつは。



