思えば、どんなやつがいるか分からない日本で、好きな子をひとりきりにしてその場を離れるなんて、馬鹿な話だった。
少し考えれば想定できたことなのに、俺はひたすら自分を責めたくなる。
俺の分のお茶と、花音の分のココアを持ってドーム状水槽の元へ帰れば、そこにいたのは花音だけじゃなかった。
…男二人組。
どこからどう見たって、ナンパ。
花音に絡む男と、嫌がる花音の図。
無性にイライラして、後先考えずに駆け寄っていた。
「なにしてんの」
「…あ?」
俺は飲み物ふたつをベンチに置いて、花音の手首を握っていた男の手をはたきおとす。
汚い手で花音に触んな。



