【完】溺愛禁止令







「ちょっとした迷信があってね」


「…迷信?」




俺も水槽を見上げて、小さく息をついた。



どんな内容の迷信か、なんて…教えてやらないけど。




「よし」



不意に立ち上がって、ぐーっと背伸びをした。




「なんか飲み物買ってくるよ」


「え……そ、それなら、わたしも行く…」


「いいって。歩き疲れたでしょ? なんか飲めないものとかある?」




ほんとに、少しでも体を休めて欲しい。
それだけが理由で、俺は花音と離れてひとりで自販機へ行く決断をした。



だって無理させたくないし…。




俺の問いに、花音は不服そうな顔をしながら「…炭酸と、コーヒーが飲めないです…」とまた敬語に戻って言う。



飲めないものまでかわいい。
甘党だよね、花音って。



俺は「わかった」と一言返事をして、自販機のある場所へ向かった。