「鈴江くんこそ、大丈夫ですか?」
軽く聞いてみたら、鈴江くんは眉毛を下げて言った。
「鈴江くんじゃなくて、絃って呼んでよ。俺、自分の苗字あんま好きじゃないんだ」
人のこと名前呼びするのってすごく苦手なんだけど、でも…。
鈴江くん…もとい、絃くんの要望だから、無理に苗字で呼びたくない。
「わかりました、絃くん。あ…あの、わたしは…」
今年一年同じクラスなんだし、一応名乗っておいた方がいいかなと思って口を開くと、それを遮るようにして絃くんが話し始めた。
「小波花音ちゃんでしょ。知ってるよ」
「…え」
わたしの名前…間違えずに呼ばれた。
予想外の展開にわたしは目を丸くする。



