キョロキョロと視線を動かすと、背後からまたオレを呼ぶ声が聞こえてきた。



「おーい。サトシ」


振り返ると、シィが手を振ってオレを呼んでいた。


頭上から蝉の声がして、見上げると

大きなクヌギの木に生い茂った葉が空を隠していた。

夏でも街中よりずっと涼しくて、コンビニで買ったアイス、ここでよく食ったっけ。


秋には、茶色い落ち葉がじゅうたんみたいに敷き詰められてて……どんぐりを拾い集めて、それを爆弾に見立てて投げあったりしてた。


ここは茅野神社の裏の雑木林だ。


オレ達の格好の遊び場所だった。


木の枝にロープを渡してビニールシートで覆って、ヒミツ基地なんてのも作ってた。


横田ってヤツがどこから拾ってきたのかエロ本持ってきて、みんなで「オエー。なんか気色悪っ!」なんて言いながら笑いあったりしてた。


「サトシ! 早く来いって!」


シィが手を振り、ヒミツ基地の中からオレを誘う。


「おー!」


オレも慌ててそちらへ向かう。


中に入ろうとビニールシートを開けた途端……


また目の前が暗くなった。