君が死ねばハッピーエンド

「シイナが美術室を出ていって、すぐに私も準備室から出て、絵とハサミを持ち帰った。絵は自宅で供養のつもりっていうか…このまま捨てるのは決心がつかなかったから。ハサミは咄嗟に持ち帰っただけだった。家で絵をぼーっと眺めてたら気づいたの…」

「何に?」

朔の声がいつもより低い。

朔とちーちゃんしか居ない世界になってしまったみたいに、みんなジッと二人を見つめていた。

「文化祭の日、開会式が終わって、私、シイナに言ったの。“絵を運ぶから先に教室に戻ってて”って。シイナは“まだ展示室に運んでないの?”って言った。シイナは、まだ絵を美術室に置いたままだって知らなかった。犯人だったら知ってたはずだから」

「知らないふりなんて簡単じゃない!」

そう言った女子に、ちーちゃんは小さく首を横に振った。

「シイナは…咄嗟に、自然に、嘘をつけるような子じゃない。そんな当たり前のこと、ずっと知ってたはずなのに…私はそんなことも忘れてたの…。それにね、そんな曖昧な証拠だけじゃないの。家でハサミを持ってみた。どんな気持ちで絵を傷つけたのかって。このハサミで、どんな感情で、どんな顔で切りつけたのかって!ハサミを握ってみたの」

ちーちゃんはその時のことを再現するみたいにハサミを握った。

それから、クラスの中心の女子の席にそっとハサミを置いた。

「なっ…何よ!」

「持ってみて」

女子がハサミのグリップに指を通して持ち上げる。
それからちーちゃんは、ポケットから折り畳んだ一枚の紙を取り出した。

広げた紙には一本の黒い線が引いてある。

「線に沿って切ってみて」

女子は普通のことをいつも通り、簡単にやってみせた。

「これが何?」

「普通にできたでしょ」

「当たり前でしょ!」

「でもシイナはそのハサミじゃ同じようにできない」

「なんで…」

「シイナは、左利きなの」

ちーちゃんがハサミを女子に握らせた時から私の心臓はドキドキ鳴っていた。

小説の中の名探偵みたいに、ちーちゃんはトリックを暴いた。

「左利きでもハサミくらい普通に…!」

「シイナ、いつも使ってるハサミ、貸して」

頷いて、筆箱から自分のハサミを取り出した。
それを、女子の机の上に置いた。

さっきと同じようにハサミのグリップを握った女子は、その違和感に顔をしかめた。

「何これ」

「左利き用のハサミはね、右利きの人がハサミを使うのと同じようにちゃんと指がグリップに沿うような形状になってるの。それから…」

私は女子からハサミを借りて、ちーちゃんが描いた線の残りを切ろうとした。

「一番の特徴はコレ。刃の合わせ方が違うの。右利きの人は右手でハサミを持つから、ハサミの左側から線や切り口が見えるでしょ?でも左利きだと左手で持つから線が手で隠れちゃうの。だから刃の合わせ方を逆にして、切り口が右に出るようにすれば、線も切り口も見えるようになって使いやすいんだよ」