君が死ねばハッピーエンド

眠れなかった私は今日も朔が迎えにくる前に家を出た。

待ち合わせの神社の前で朔を待っていたら何人かのクラスメイトも通っていく。

ほとんどの人は気まずそうに目を逸らす。

おはようってちょっと困ったみたいに声をかけてくれた人も居たのに、そうなると次は私が辿々しく返してしまう。

悪循環。

これじゃあまるで私が犯人ですって言ってるみたいだ。

「シイナ。おはよ」

「朔」

「ちゃんと眠れた?」

「…あんまり」

「だよね」

苦笑いする私の手を、朔は握った。

「朔…今は私と居ると朔まで変な目で見られちゃうよ」

「なんで?」

「私はまだ疑われてるから…」

「俺は疑ってない」

「でも朔が私を庇えば庇うほど、朔まで悪く思われちゃう」

「なんでシイナは悪くないのに俺まで悪く思われるの?そんな風に思う奴が居るならそいつらのほうが悪いだろ」

「でも…」

「シイナは何もしてない。悪くないってシイナが一番分かってるなら自分まで悪く言うなよ」

私の手を握る力がギューって強くなった。
今日の朔の手はあったかいって、ちゃんと分かった。

十二月になろうとしている。
登校中に羽織る上着もちょっとずつ厚手になっていく。

ふと、この前廊下の窓から見た、落ちそうな木の葉を思い出した。

あの葉っぱは、もうとっくに落ちてしまったと思う。

あの時見た寂しそうな風景が急に頭にこびりついて、ちょっと苦しくなった。