君が死ねばハッピーエンド

もう一度美術室に戻ってみた。

絵もハサミもそのまま。
もちろんちーちゃんも居ない。

今日は日曜日。
外部のお客さんも自由に参加できるから、文化祭は毎年日曜日にやっている。

本当に沢山の人が学校に入っているから、いつもと違う風景の中、一人の人を探すのは難しかった。

教室の前に行ってみて、やっぱり中に入ることが怖くて引き返した。

何もやましいことが無いなら堂々としていればいい。

そう思うけれど、みんなの視線が怖くてできなかった。

「実際どう思う?」

トイレに入っている時だった。
三人くらいの女子が入ってきて、水道の所で喋っている。

「えー、シイナちゃんのこと?」

心臓がキリッと痛んだ。

「うん。やっぱシイナちゃんがヤッた…のかな?」

「そんなことするタイプかなぁ?」

「ほんとは仲悪かったとか?」

違う…ちがうちがう…。
私とちーちゃんは喧嘩なんてほとんどしたことも無いし、ましてやちーちゃんを憎いって思ったことなんか絶対に一度も無い。

「だとしたら相当怖くない?」

「人は何考えてるか分かんないからねー」

口々に勝手なことを言って、女子達はちょっと楽しそうにトイレを出ていった。

顔は見てないけれど、声で誰かは大体分かる。

当事者は悲しくて苦しいのに、第三者からしたらこんなこともエンタメになるんだ。

自分達が少しでもそのエンタメに関わっているってことに高揚してしまうのかもしれない。