君が死ねばハッピーエンド

何度も名前を呼んで追いかけても、ちーちゃんは止まってくれない。

キャンバスを抱えた状態だと走りにくくて、ちーちゃんはどんどん遠くに行ってしまう。

それに今日はお客さんも多い。
すぐに見失ってしまった。

「シイナ…!」

ちーちゃんを追いかけながら、私も朔に追いかけられていたようだ。

息を切らした朔が、私の手を引いて教室に戻ろうとするのを、私は引き留めた。

「シイナ。一緒に戻ろう」

首を横に振って答える。

「シイナ。大丈夫だから」

「一人で戻って…。私は戻らない」

「シイナ」

「文化祭、中止にしたりしないでね。みんな頑張ってきたから。ごめん、私もちーちゃんも係に出れそうにないって伝えといて…」

朔の手をそっと振り解いて私は歩き出した。

キャンバスを持ったまま、美術室に向かった。
鍵は開いたままだった。

ちーちゃんが居るかなって思ったけれど、姿は無い。
美術室には誰も居なかった。