壊された大道具を取り囲むように、誰がやったんだと怒っている人、ヒソヒソと言い合っている人、オロオロとうろたえている人、反応は様々だった。

学級委員長の女子が、先生を呼びに行ってくると教室を出ようとした時だった。

それを止めたのは朔だった。

「今はやめとこう。きっともう、外部の先生達も集まってる」

「そう…だよね…」

それ以上どうしようもなくて、委員長も俯いてしまった。

壊されたのはヴァンパイアの棺。

朔の為の大道具だ。

「朔…」

「シイナ、大丈夫だから」

朔くんへの嫌がらせだとか、
嫌がらせじゃなくて気を引きたいストーカーの仕業だとかヒソヒソと言い合う人達を、委員長が必死でなだめようとしている。

「ねぇ、どうするのコレ」

クラスメイトの一言で、みんなが一斉に朔を見た。

コレは朔の為の道具だけど、でも作ったのは朔じゃないし、朔のせいで壊れたわけでもない。
みんなで朔に責任を委ねるのはやめて欲しかった。

きっとみんな不安なんだ。

もしかしたら他のクラスの人かもしれないし、
でもピンポイントで朔の物だけを壊すなんて、クラスの中の誰かが犯人なんだって、きっと誰もが思っていた。

この事件を許すのも、犯人を追及するのも、これからどうするかの決定権も、全て朔にあると思っている。

朔だけじゃない。
みんなでやってきたのに。