君が死ねばハッピーエンド

「シイナ!!!千種…お前!!!何やってんだよ!!!」

「朔、なんで?…あぁ、そっかぁ。やっぱり朔は私のことならなんでも分かるんだね?」

「おい!シイナに何したんだよ!」

「シイナ?そんなのどうだっていいじゃない。朔、やっと私達は二人きりに戻れるよ」

「お前…おかしいよ…全部お前が犯人だったのか?」

「そうだよぉー。ぜーんぶ、朔の為にこの女とかぁー、邪魔な害虫を駆除する為にヤッたんだよ。頑張ったでしょ?」

「やっぱりお前には二度と会うべきじゃなかったんだ…」

「朔…?何を言ってるの…?」

「あぁ…シイナ…シイナごめん…俺のせいで…」

朔が横たわる私を膝に寝かせたまま、手を握って、もう片方の腕で頭をギュッと包み込む。
あったかい…。朔の香りがする…。

「朔…くるし…よ…」

「ん。ごめんな…シイナ…意識はあるか?」

「だいじょうぶ…。朔、ありがとう。私を見つけてくれて」

「当たり前だろ」

「盗聴してた?」

「…してない。もうしないって誓っただろ」

「ふふ…そうだよね。ごめん…」

ちーちゃんが朔の肩を押して、その拍子に私はまた床に転がった。

「なんでここが分かったの!?」

朔の服を掴んだまま、ちーちゃんが朔を揺らす。

ボヤける視界で二人を見た。
あぁ、本当だ。
こうやってみたら、二人は似ている要素がこんなにもある。

大きな瞳と長いまつ毛。
ツヤツヤの髪。口角の上がり方。

自分に自信が無くて、朔の隣ではいつも俯いていたから気づかなかったんだ。

「昼過ぎだよ。渚先輩からメッセージが届いた。俺さ、シイナと先輩のこと疑ってたし不安だったから、バイト先でシイナに何かあった時の為にって、シイナに内緒で連絡先交換してたんだ」

「先輩、なんて?」

「“ちーちゃんがシイナちゃんと一緒に謝りたいんだけどシイナちゃんが倒れたからって、俺の家の前で助けを求めてる。なんかおかしい気がする”って。家の場所も教えてきた。その時俺、単発のバイトに入ってたんだ。シイナにクリスマスプレゼントを買って謝りたかった…。元に戻りたかったんだ…。だから気づくのが遅くて…ごめんなシイナ…」

ゆっくりと体を起こして朔の腕に触れた。
来てくれて嬉しかった。
朔が私の為に…。

その腕も、ちーちゃんに振り解かれてしまった。

「朔…ここの鍵は開いてたの?」

「開いてたよ」

「先輩は!?」

「俺なら大丈夫」

「先輩!?」

「まだ意識はちょっと朦朧としてるけどね。朔くんが来て、なんとか目覚めさせてくれたよ…階段を上ったら絶対落ちると思って、機会を待ってたんだ」

「先輩にも同じ薬を使ったの!?」

「あーあー。タイムオーバーか」

「ちーちゃん…お願い。こんなこともうやめて。あまりにも悲しすぎるよ…。朔を愛してしまったことは私達には責められない。でもこんなことするのは間違ってる!朔を苦しめないで…」

「朔を苦しめてんのはお前だろうがぁ!!!」

「違う!ちーちゃんが朔を想って人を傷つけるほど、朔は苦しんでるの!愛してるならなんで分かんないの!?」

「綺麗事言うな!お前は朔の為ならなんだってするって覚悟が無いから綺麗事で逃げようとしてるだけ!朔を愛する資格なんてない!」

「だったら要らないよ…」

「は…?」

「朔を愛する為には誰かを蹴落としたり、危害を加えたりする覚悟が必要なら、それで朔を苦しめても“朔の為”って言うのなら、そんな資格は要らない…。私はただ、朔と対等で居たかった。メソメソしないで、人目なんて気にしないで、私が朔の彼女なんだって自信が欲しかっただけ。朔の隣に居られるだけで良かった…」

「それを奪ったのがあんたでしょ…」

「ちーちゃん?」

「それだけで幸せだった私の、その未来を奪ったのがあんたでしょ?だったらなんでもするしかないじゃない。私は絶対に、最後まであんたを逃さない。あんたを擁護する周りのゴミもぜーんぶ必ず消す。あんたが持ってる物全部壊してあげる。シイナがどこに居ても逃さない」

「千種…もう…」

「ねぇ、ちーちゃん…」

指先に、転がったハサミの刃が当たった。
ピリッとした感触を感じるくらい冷たい。