君が死ねばハッピーエンド

「持ち物検査の時、彼の鞄から出てきたんですよ。自分のは制服の内ポケットから。そして二冊目が鞄の外ポケットから」

「二冊目」

繰り返した担任に、男性教師は頷いた。

「生徒が手帳を二冊持ってることなんて無いでしょう。”これはなんだ“って聞いたら”分からない“って言うもんだから表紙をめくったんですよ。そしたら中に彼女の学生証が」

担任は私を見てから「えっと…」って呟いてから、だけど何も言わずにまた男性教師に視線を戻して「どういうことですか?」と言った。

「いや僕もね、若い世代の流行には疎いですから。校則では良しとはしないけど、カップルで学生証を交換するのが流行りなのかなーとか…咄嗟に考えてみたんですよ。でも彼の様子を見てたら、これは違うなー、ってね」

三十代半ばくらいの男性教師は、それも普段の運動のおかげなのか、若々しい。
教師の中では実際若いほうだし、それなりに人気もある。

その先生が「若い世代」なんて言うと、おじいちゃんみたいに感じてしまう。

「実際、君達は付き合ってるの?」

男性教師が急に私に問い掛ける。
私よりも先に担任が「いえ、この子は!」って言った。

「この子は…ごめんね。勝手に言っちゃうけどクラスメイトの男子と交際してます」

「そうなの?」

また聞かれた私は頷いた。

「じゃあこいつとは?」

「バイト先の…先輩です。実は元々同じ学校に通ってるってことも知らなくて、バイトで知り合ってから仲良くしてもらってました。先輩!私、生徒手帳どこかで落としちゃってましたか?今日ちょうど無くなってることに気づいて…拾ってくれてたんですか?」

早口で言った私を見た先輩の瞳が揺れている。

嘘が苦手な、優しい人だ。
私は渚先輩をそう思っていた。
今だっていくらでも言い訳はできるのに、こんな時でも嘘をつけない先輩は泣きそうな目をしている。

「分からない…」

「分からないって…先輩…私達昨日会ったじゃないですか」

「会ってたのか?彼氏も一緒に?」

「いえ…私の親友が一緒でした。その…ちょっとバイト先で事件があって…」

担任も男性教師もそのことは把握しているようだった。
それから文化祭で起きた事件のことも、全てが私や渚先輩の周りで起きていることも。

そして今日のコレ。

雰囲気で分かった。
犯人は恐らく私のストーカーで、それが渚先輩なんじゃないかと、大人達は感じているんだ。