ドアをがらりと開けると、沢瀬がびくっと身体を跳ね上がらせた。


「せっ、先パイっ、あの…」





最初のうちは、好きなんかじゃなかった。

本当に迷惑していたんだ。



いつからだろう。


その迷惑が、淡い何かに変わっていったのは。




沢瀬がおびえながら言葉をしぼり出す。


「すいませんでした。もう、これで最後にしますんでっ」



そう言う声は今にも泣き出しそうに震えていて、昨日の泣き顔を鮮明に思い出させた。


「…沢瀬」



「うぁはい!!?」


何をそんなに驚くことがあるんだろうかと怪訝な顔をすると、沢瀬が跳ね上がる心臓を押さえつけるように胸の前でこぶしを握り締めていた。