身が縮むような寒さに、人々が白い息を吐きながら小走りに過ぎていく。




「先パイ、おはようございます!!」




「…おっす」


いつもなら無視する沢瀬のあいさつに珍しくそう返すと、沢瀬が口をポカンと開けて突っ立っていた。



「…先パイ、熱でもあります?」


「ねーよ、バカ」


あまりにも大げさに驚かれたので、俺は不愉快になって低い声で毒づく。

あいさつなんて、するんじゃなかった。



「だって、先パイがあいさつ返してくれたの、初めてじゃないですか!?」


「知らねーよ」




「おいおい、こんな所で夫婦ゲンカはやめろって」


俺たちの間に割って入ってきたのは、白いマフラーをぐるぐると首に巻きつけた里季だった。


「夫婦ゲンカじゃねぇって― 」

そこで、俺の言葉は途切れた。