「…先パイ?」



沢瀬が心配そうに俺の顔をのぞきこんでくる。

そのとき俺は一体、どんな顔をしていたのだろう。



俺はあわてて沢瀬に背を向け、本を買ってこちらへ歩いてきた里季を引っ張って、走って店を出る。


「え、おいっ、沖!?」




沢瀬は雑誌を持ったままきょとんとしていて、それ以上沢瀬の顔が見れなくて、俺は開いた傘で視界を埋めた。


たとえ台風が過ぎ去っても、ここにいる小さな台風はまだまだ過ぎてくれそうにはない。