君と歩む美しい世界は,きっと

 もう、1分前だ。陸をパッと見ると、分かっていると言うようにうん、と頷いた。

 小声で「せえの」と言って、黙想と声を合わせる。


 みんなが下を向いて目を瞑り始めた頃にふと黒板を見ると、曜日が昨日のままだった。

「陸、ごめん、私あれ変えてくるね」

 小声で伝え、教卓に立ち、「木」を「金」に変え、再び陸のとなりに立つ。
 
 陸が口を「ありがと」と動かしたので、同じように「どーいたしまして」と笑った。
 
 小さなぷつんという音がしたあと、チャイムが鳴った。
 鳴り終わったが、まだ先生が来ない。
 「んー、とりあえず、黙想終わり。先生が来られるまで問題集といて待っとこっか」


 地歴科の山谷(やまや)先生は、自分は時間にも人間関係にもルーズなのに、自分以外の人間には揚げ足ばかり取るような『自分に優しく、人に厳しく』という典型的な嫌な人間で、授業の遅刻もこれでもう6回目だ。まだ6月だというのに。



「陸、どうしようか」

「そうだね、3分経ってもいらっしゃらなかったら、僕が職員室訪ねてくるよ」

「分かった、よろしくね」

「うん」

 そんな会話をして席に着いたあと、「あ」と声を出す。

「席、グループにしとこっか」

 山谷先生の授業では1グループ6人ずつの計6グループを作り、グループでディベートをしながら進める。

 討論や話し合いを進めることで課題を深めることにもなるし、クラスメイトとのコミニュケーションをとることもできる、一石二鳥の進め方であり、評判もいい。

 ただグループの中から2人、班長と副班長を決める方法が成績順なので、そこへの批判がすごい。

 この学級は特進クラスで1位から20位ぐらいの人までは、学級での順位がそのまま学年の順位でもある。

 1位は陸、2位は