「そして今日はなんと! 市川さんに先日解禁された映像にアフレコをつけてもらいます!」
「はい! 気になる方は,CMの後で,また会いましょう!」

 笑顔を向けて,カメラに手を振る。1分半後にまた集まって下さ~い,というスタッフの声にはーい! と返事をしてマネージャーの元に寄った。

「綾乃,おつかれ」
「うん,ありがとう。透依(とうい),ごめん,私のスマホ取ってくれる?」
「はい」

 ありがと,と返してロックを解除する。LINEを開くと,通知がたまっていた。
 殆どが家族や同級生,知り合いからのもので,それらの言葉にざっと目を通すと既読をつけずにスクロールする。
 
 そうして『陸』という項目を開いて,見てた?とメッセージを送る。すぐに既読がついて,『うん,綾乃が出てるから』と返ってきた。
 彼らしい,優しくて丸い言葉。