お弁当をバッグに入れて、デスクに戻る。空腹はコーヒーで満たしながら仕事を続けた。
あと何分、あと何分とカウントダウンをしながら仕事をして、終業まであと30分を切ったときだった。
部長から資料作成の業務依頼がメールできた。

(うそ……)

いつもなら喜んで残業をするけれど、今日は本当に帰りたかった。
でも仕事は断れないから了承の返信を送る。
海外事業部は時差の関係もあって、夜遅くまで仕事をしている社員もいる。朝はインターバルをとって出勤したりと、時間もバラバラ。
その点庶務は定時で帰れることが多いから、残業代を稼ぐチャンスはあまりないけれど、決算期は毎日残業で、その月だけは少しだけ贅沢ができた。

(さて、指示を仰ぎに行きますか)

デスクから立ち上がろうとしたとき、軽くめまいがした。ごはんを食べていないせいだろうが、大丈夫だろうか。

「部長、資料の作成ですが」
「ああ、あらかた作ってあるから、体裁を整えてくれればいい。明日の会議の分だ」
「畏まりました」
「あと、終わったらコピーを」
「畏まりました」

会議資料は10ページ足らず。ざっと見ただけでも私が整える必要がなさそうで、直すところを探す方が時間がかかるのではといったレベルだった。

(これなら早く終われそうね)

集中して作業をしていてきがつかなかったけれど、今日はみんな退社するのが早いみたいで、気がつけば私と部長の他に2、3人残っているだけだった。

(どうでもいいけどお腹が空いた)

給湯室にお茶を淹れるふりをして何かを食べようと考えたけど、こう言うときに限って手軽に食べられるお菓子がない。
空腹なのに、そこへコーヒーばかりを飲んだから、お腹に空気がたまったような感じになって、痛い。

(うちから出してる薬で何かなかったかしら)

部内にある常備薬の箱を探してみた。胃薬はあったけど、私の症状に効くとは書いてない。でも少しくらいの痛みは改善できるかもと、胃薬を一包飲んだ。