「水元? どうした、大丈夫か? 授業はじまるぞ」

 肩を揺すられ、ハッと目を覚ますと、担任の佐々木先生が心配そうにわたしの顔を覗き込んでいた。

「せんせっ……いや、これはそのっ、ただのひとだす……」

 慌てて言い訳を口にしようとして、膝の上が軽くなっていることに気がついた。


 いない!?

 さっきのは、夢? ……なわけはないか。

 だったら、せめて起こしてからいなくなってくれればよかったのにぃ。


「だ、大丈夫です。すみません、ご心配をおかけしました」

 ぱっと立ち上がってぺこっと頭を下げると、「おーい、廊下は走るなよー」という先生の方を一切振り返ることなく、わたしは教室へと駆け戻った。