あれっ、一個もいいとこないんだけど?

 でも、五藤先輩の言い方は、メガネをしていない先輩は、真逆の人だって言っているように聞こえた。


 そういえば、校長以上の権力を持って学園の統治を任されているっていうだけじゃなく、高校卒業後は、きさらぎ大学に進学するのと同時に、父親から学園長の仕事も引き継ぐことになっているっていうウワサも聞いたことがある。

 早く学園の運営は息子に任せて、自分は他の事業に集中したいってことなのかもしれないけど……。

 なにもそこまで急がなくてもって、一般人のわたしなんかは思ってしまうけど、それぞれの家庭の事情なんだから、こればっかりは仕方ないよね。


 ああ、そっか。

 そんな重荷を背負わされているせいで、よく眠れない状態が続いているのかもしれない。


 そう思ったら、わたしの膝の上で寝息を立てている葉月先輩が、なんだか触れただけで壊れてしまいそうな、繊細なガラス細工のように思えてきた。