「え。ちょっと待って。ヒミツにっ……ごめんなさい。お願いだから今聞いたこと、ヒミツにしてください。この通り!」

 わたしに向かって土下座する五藤先輩のことを、長田先輩が冷めた目で見下ろしている。

「別に、言いふらしたりしませんよ」

「だよね。うん、信じてた。きっと栞奈ちゃんなら、そう言ってくれるって」

 あからさまにホッとした様子で立ち上がる五藤先輩。


 わたしは、葉月先輩のことをなにも知らない。

 みんなのウワサ通りの人なら、きっと冷たい人なんだろうなっていうことくらい。

 確かに、言ってることは横暴だし、超エラそうだし。

 逆らうヤツは退学処分だ、ってすぐに退学をチラつかせて人のことを従わせようとするし。