目が覚めた。

またあの時の夢だった。

こんな夢を見ると決まって玲が恋しくなってしまう。
温かな目で見つめられることがないとしても。

時計を見ると午前3時を過ぎていた。
こんな時間に玲を呼び出すのは気が引ける。




仕方なく、ベッドの中で目をつぶろうとした…とき

パタン
と扉を開ける音がした。

こんな時間に誰だろう。

まさかお化け……
と思い体が固まる。

「お嬢様…」
静かで、少しだけ優しい声が扉のほうから聞こえた。

玲の声だ。

「はい!」

玲のことを考えていたら、玲が現れたものだから、びっくりして、つい敬語になってしまった。

「急に失礼しました。何となく、お嬢様が寝つけないような気がしましたので…」
玲は気まずそうな顔をしている。

「あ、ありがとう。玲の言うとおりで、目が覚めたら何だか心細くなっちゃった」
本当は今すぐにでも、玲に抱きつきたい。


「やはりそうでしたか。ハーブティーでもお持ちしましょうか?」

「じゃあ、お願いしようかな。…玲と一緒に飲みたいから、2つ用意して」
せめて、玲と一緒の時間を過ごしたい。

「かしこまりました」

いつもと変わらない調子で玲は部屋を出て行った。












数分後―――

「お嬢様、お茶の用意ができました」

玲は要領よくハーブティーを淹れる。

「ありがとう」
そう言い、ティーカップに口をつけた。




やっぱり、玲が淹れてくれるお茶が1番美味しい。
お茶が1番美味しく飲める温度で淹れてくれると同時に、猫舌の私でも飲みやすい温度に調整してくれる。

こんな小さな気づかいをしてくれる玲が好き。――好きだった。