口元をほころばせてエクボを見せて笑っている郁を見て、隣の席の清水雄太も表情をほころばせた。
ふたりは高校に入学してから知り合い、そしてつきあい始めた関係だった。
成績も同じくらいで、同じ高校を目指している。

「あ~あ、全然わかんなかった」
ブツブツと文句を呟いているのは後方の席にいる二宮妙子だ。
「俺も。今回のテスト難しかったよな、先生本気出しただろ!」

妙子の呟きに反応して教卓に立つ先生に文句の矛先を向けたのは河島仁だ。
仁は短い髪の毛をツンツンに立てて制服を着崩している。
少し派手に見えるけれど、よくいるタイプだった。

「ほら、ふたりとも答案用紙を出してよ」
後方から答案用紙を集めていた山口理沙が文句を言う。
理沙は妙子と仁と仲が良くて、いつもこの3人で行動している。

「理沙はできたの?」
「できるわけないじゃん」
妙子からの質問に理沙は大げさに肩をすくめてみせた。