すっかり暗くなったグラウンドでは化け物が静かに座り込んでいる。
その体は座っている状態でも3階に届きそうなくらい成長していた。

「このまま成長し続けたらどうなるんだろう」
窓の外を見ていた美麗が呟く。
「考えたくないな」

昂輝が疲れた口調で返事をした。
きっと、体育館や校舎はほんの一瞬にして破壊されるようになるだろう。

そうなったら自分たちが助かるすべはないということになる。
「さっきからヘリの音も聞こえなくなったよね」
「あぁ。ここにいてもなにもできないからな。残ってるのは時々来る報道のヘリくらいじゃないか?」

残っていた自衛隊のヘリ1機は少し前に撤退してしまった。
一度基地へ戻って出直すとアナウンスしていたけれど、本当のところはわからない。

銃もきかない化け物相手に人間がどう対応すればいいかなんて、考えられなかった。
「毛布を持ってこない?」
誰にともなく声をかけたのは妙子だった。