なんだ。人助けをしていたのならそう言えば良かったのに。でも案内しただけなら四十分もかからないんじゃないのかな。

 すると、まるでわたしの頭の中の疑問を読んだように、老婦人が言った。

「助かりました。もう大丈夫ですとわたしが言ったのに、この人はお年を召した方が一人でこんな場所に立っていると危険だからとおっしゃって、息子が来るまで一緒に待ってくれたんですよ」

 驚いた。すごくいいヤツじゃないか。優しいし頼もしいし。そんな立派な行為、なかなか出来るものじゃない。

 人と会う約束があるのにもかかわらず、困っているお年寄りに手を差し伸べるなんて。

 人と会う約束が…わたしと…わたしとの約束をおろそかにして…コイツめ。