「保健室行ってくる…」
「彩菜、送るよ」
「ありがとう。でも平気、歩けるから」
昼食後、突発的な腹痛に襲われ、同時に気分が悪くなった。
好まないコーヒーの飲み過ぎが原因か、それとも…。
「先生に伝えておくね」
「ごめん、お願い」
心配して声を掛けてくれた菜々に背を向け、教室を出る。
と同時に、授業開始のチャイムが鳴った。
誰もいない廊下を進み、階段を降りていく。
ここがあの日のあの時の場所だ。
荷物をぶちまけた事件現場。
彼の手によって拾われた教科書を受け取った踊り場。
この感情の始まりの場所。
あのとき足を滑らせなければ、あのとき彼と話さなければ。
こんな風に悩まなくたって、良かったのかもしれない。


