女子トイレの前で待っていたら、ようやく姿が見えた。
ハンカチで口元を拭き、吸入器をハンドバッグに戻す。
「ごめん…」
「少し早めに帰ろう」
「大丈夫、そんなにひどくないから」
「愛優が心配してたよ」
「結局バレちゃった、何も言ってないのに」
「察しがいいよ。周りをよく見てる」
「そう思う…」
来た道を戻り店へ向かうと、近くのベンチに二人の姿を見つけた。
「ありがとう、愛優」
「うん…平気なの?」
不安げに首を傾げた愛優に、季蛍が両手で丸くサインを作った。
「大丈夫。ごめんね、心配させちゃって」
「ううん、大丈夫ならいいの」
ホッとようやく笑った愛優が、両手で握っていたクレープの正面を向けた。
「なにそれ可愛い、見てよ季蛍」
「なあに?」
クレープ生地の上にアイスが乗っていて、チョコレートの耳と目でクマを表している。
「本当だ、かわいい!そんなの売ってるの?」
「なんかね、動物モチーフのクレープなの」
そう言って店の看板を指差した愛優が、包装紙を綺麗に剥がして夏来に手渡した。
「気をつけて食べてね、落ちるから」
「わかった!」
かわいそうだね、と言いながらチョコレートの耳を外し、小さい口の中へ。
おいしい〜と頬を撫でた夏来が、口周りについたクリームを指で拭った。
「口拭くよ?」
「きゃはは、くすぐったい」
「もー、動かないで」
ティッシュで口周りを拭ってやった愛優が、クレープを頬張る様子を微笑ましそうに眺めている。
「…私もそれ食べたい」
そう言ったのが愛優だと思ったので顔を見たが、声を思い返すと明らかに季蛍が発した言葉だ。
「え」
「クレープ…」
「正気?」
「うん」
「食べられるの?」
「…たぶん」
「愛優は?」
「私は大丈夫」
「ねえ愛優、私と半分こしよ」
「えー、食べられる?」
「半分こなら食べられるよ」
「じゃあ…食べる」
「何がいい?」
「任せる!」
そうと決まると嬉々とした表情で店へ向かい、メニューの看板を眺めている。
「蒼は?」
「…大丈夫」
「みて、かわいい」
手招きをされてメニューを覗くと、クマにとどまらず いろんな動物のレパートリーがあるようだ。
「なににするの?」
「うーん…」


