私は、自分が破滅しなければいいとそう思っていた。そのために、今まで生きてきたのである。
 この手を取れば、厄介なことに巻き込まれることになるかもしれない。その可能性はあるだろう。
 彼女には申し訳ないが、これは私には関係がないことだ。彼女にとっては解決しなければならない問題でも、今の私には関係がない。私に、危害が及ぶ訳ではないのだから。

「……私でよければ」
「ありがとうございます」

 だが、私は彼女の手を取っていた。厄介なことに首を突っ込むことになる。それはわかっている。しかし、それでもこの手を取るべきだと思ったのだ。
 理由は二つある。一つは、目の前にいる彼女だ。慣れ親しんだ主人公で、今は友人である彼女の手を払いのけるなんて、それはしたくなかった。
 もう一つは、アルフィアだ。今の私は、彼女の境遇を知っている。憎たらしくて仕方なかった彼女の心の傷を、私も負っているのだ。
 そんな彼女が、もし何者かによって陥れられたなら、その人物を許せない。そんな思いが、私の中には芽生えていたのだ。

「……さて、それじゃあ、そろそろ行きましょうか」
「行く? どこにですか?」
「お昼は、まだ食べていないのでしょう? 早くしないと、お昼休みが終わってしまうわよ?」
「……そうですね」

 私の言葉に、メルティナは笑顔を見せてくれた。
 とりあえず、難しい話は一旦終わりだ。流石に昼食を抜きたくはないので、早い所行動した方がいいだろう。